第60回中国四国産業衛生学会にて当会職員3名が発表しました。

平成28年11月27日(日)
米子コンベンションセンター5F第4会議室にて開催

【第60回中国四国産業衛生学会】ホームページはこちらです。


① 演者:山口孝子(医師)

演題:『性別、職業別の大腸がん検診成績の比較』
~生活習慣病予防健診結果から~

【背景】
大腸がんは、がんによる死亡数で男性の第3位、女性の第1位(2014年)である。大腸がん検診は働き盛りの世代では、多くが職域において受診している。精度の高い大腸がん検診のために、職域においても精度管理が求められている。
【目的】
職業と大腸がん検診成績についての研究は少ない。当協会は主に労働健診を行っており、受診者の職業についても確認している。職域では複数の事業所の大腸がん検診予定者及び実際の受診者を把握する事が難しい。全国健康保険協会(協会けんぽ)による生活習慣病予防健診は、一般健診と共に大腸がん検診(免疫学的便潜血検査)が必須項目となっている。生活習慣病予防健診受診者の検診受診状況を見る事により、検診成績を正確に把握することができる。2012年4月から2015年3月までの3年間に当協会で実施した生活習慣病予防健診受診者の大腸がん検診の成績について、男女別、職業別に比較、検討した。
【対象】
2012年4月1日から2015年3月31日までに当協会で生活習慣病予防健診を受診し、大腸がん検診(免疫学的便潜血検査)を受けた受診者を対象とした。各年度は4月1日から翌年の3月31日までとした。
【方法】
便潜血キット(OC-ヘモディア オートⅢ・栄研)を用いた2日法により実施した。便潜血キットによる検体を1本あるいは2本とも提出した受診者を大腸がん検診受診者とした。便潜血の測定装置はOCセンサーDIANA、カットオフ値は130ng/mlであった。
職業の分類は、1.専門的・技術的職業従事者、2.管理的職業従事者(含役員)、3.事務従事者、4.販売従事者、5.サービス職業従事者、6.保安職業従事者、7.農林漁業作業者、8.運輸・通信従事者、9.生産工程・労務作業者、10.その他の職業とした。職業による成績の比較には、作業形態が似ていると思われる業種をまとめ、「専門・管理・事務職」、「販売・サービス」、「運輸・通信」、「生産、労務」の4つとした。
【結果】
2012年度~2014年度の生活習慣病予防健診受診者は延べ130,121人、その内大腸がん検診受診者は116,158人であった。各年度の検診受診者は37,023~41,124人(受診率89.4~89.0%)であった。3年間で男性53人、女性15人で大腸がんが発見された。男性の検診受診者は延べ86,061人で、受診率91.5%、要精検率5.6%、精検受診率33.7%、発見率0.062%であった。女性の検診受診者は延べ30,097人で、受診率83.5%、要精検率3.8%、 精検受診率48.7%、発見率0.050%であった。男性の3年間の職業別の成績は、受診率は「運輸・通信」が最も低く、要精検率は「運輸・通信」が最も高かった。精検受診率は「運輸・通信」が最も低かった。女性の「運輸・通信」従事者は少ないため、他の職業との比較はできなかった。
【考察】
女性は男性に比較し、受診率、要精検率が低いが、精検受診率は男性より高かった。男性の「運輸・通信」従事者では、受診率、精検受診率の上昇とともに発見率が上昇する傾向が見られた。「運輸・通信」従事者を中心に、大腸がんについての啓発等により受診率、精検受診率を向上できれば、発見率も向上する可能性が考えられた。


② 演者:前田紀代美(保健師)

演題:『職域における特定保健指導による自己評価変化と効果的な指導についての検討』

【背景】
当協会は労働衛生機関として、健診では主に労働健診を行い、保健師・管理栄養士による保健指導も行っている。平成20年度から特定保健指導を実施しているが、指導により減量に成功する人も多いが、達成できない事例もある。職場には長時間労働やシフト勤務、時間外労働等の問題がある事も多く、職場環境が変わらないまま、食事時間の変更や運動時間の確保等の生活習慣改善を行うにはかなりの努力を要する。職域における特定保健指導での認知や行動変容についての研究は多いが、勤務状況を考慮した特定保健指導の進め方についての検討は多くはない。
【目的】
当協会で実施した特定保健指導により減量に成功した人と達成できなかった人の指導前後の自己評価の変化から、勤務に合わせた、無理のない生活改善の進め方について検討した。
【対象】
平成26年4月1日~平成27年3月31日の期間に、当協会にて特定保健指導の初回面接を実施した男女を対象とした。
【方法】
特定保健指導は初回面接と1回の個別面接と3回の本人への手紙送付により行った。特定保健指導を実施した448人のうち中途脱落を除く404人の中で、指導6ヶ月後の体重が3%以上減少した人を減量成功群、3%以上増加した人を減量非成功群とした。両群の初回面接時と終了時に実施した生活行動アンケートによる食事と身体活動についての自己評価結果を比較した。食事は、1:食べる量は腹八分目だ、2:3食規則正しく食べている、3:就寝の2時間前までに食べ終わる、4:野菜、海藻、きのこ類を良く食べる、5:よくかんでゆっくり食べている、6:味付けは薄味だ、7:油脂類の摂取は少ない、8:ジュース類、スポーツドリンク、菓子類、菓子パンなどは食べない、の8項目、身体活動は、1:仕事で身体をよく動かしている、2:仕事以外で身体をよく動かしている、3:1日に歩くのは10,000歩以上だ、4:歩ける距離では乗り物を利用しない、5:階段をよく使う、6:休みの日は家でゴロゴロしない、7:週3回以上運動している、の7項目。評価は1~5の5段階で、数字が上がる程生活習慣改善がされていると評価した。さらに指導前後の健康診断での血圧、HDL-CHO、TG(空腹時)、血糖(空腹時)、HbA1c値を比較した。指導前後の自己評価結と併せてウィルコクソン符号付順位和検定により検定した。
【結果】
減量成功群は106人(男89人、女17人)で、年齢51.0±7.7歳(平均±SD)、積極的支援83人、動機づけ支援23人、減量非成功群は31人(男23人、女8人)で、年齢49.2±7.7歳(平均±SD)、積極的支援14人、動機づけ支援17人であった。減量成功群では、指導後は指導前より食事と身体活動の全項目で自己評価ランクが高くなった。減量非成功群では、食事の4:「野菜、海藻、きのこ類を良く食べる」、身体活動の4:「歩ける距離では乗り物を利用しない」のみで自己評価ランクが高くなった。減量成功群ではHDL-CHOが指導後の健診で有意に増加したが、血圧、TG(空腹時)、血糖(空腹時)、HbA1cで有意差はなかった。減量非成功群では、指導前後で検査の全項目で有意差を認めなかった。
【考察】
減量成功群は、指導後の自己評価結果の改善と指導後の健診でHDL-CHOが有意に増加している事から、生活改善が無理なく継続できていると考えられた。長期的には他の項目も改善していくものと予測される。減量非成功群は、食事・運動での改善が各1項目しか認められなかった。しかし、指導後は食事に食物繊維を取り入れるようになり、運動でも多少とも歩く習慣ができ、生活習慣を僅かながら改善できた。少しでも改善できた事を評価し、さらに勤務の負担にならない生活習慣改善を提案する事で、本人の意欲を継続できる可能性が考えられた。減量非成功群には勤務状況が生活習慣改善を阻害している例が多く見られた。食事では項目8の菓子パン等の摂取は、夕食が遅い時や休憩時間の少ない例に多く、遅い夕食は朝食の欠食に繋がりやすいと考えられた。対象者の勤務状況を勘案しながら食事内容や身体活動の改善を指導していく事が重要と考えられる。


③ 演者:吉田和恵(保健師)

演題:『平成27年度健康診断受診者における体重管理等についての検討』

【背景】 
平成20年4月から、高齢者の医療の確保に関する法律により、医療保険者に対して、内臓脂肪の蓄積等に着目した生活習慣病に関する健康診査(以下「特定健診」)及び、特定健診の結果により健康の保持に努める必要があるものに対する保健指導(以下「特定保健指導」)の実施が義務付けられた。特定健診・特定保健指導については、事業評価が可能となるよう標準的な健診・保健指導プログラムが作成されている。当会は労働衛生機関として、特定健診及び特定保健指導に携わっている。
【目的】 
食習慣と健康診断結果を検討し、より効果的な保健指導に結びつけることを目的とした。
【対象及び方法】 
①平成27年度に実施した特定健診受診者、男性39,551人、女性18,406人について、特定健診における「標準的な質問票」のうち、20歳から10㎏以上の体重増加、早食い、就寝前2時間以内の夕食摂取、飲酒量について、メタボリックシンドロームに関わる血圧、脂質、血糖検査の有所見率、BMI≧25を比較した。
②若年者の食行動と肥満について検討をするため、平成27年度に実施した健康診断受診者、男性125,134人、女性63,365人について、当会システム健康診断における食習慣アンケート項目と年代別BMI平均値及びBMI≧25の割合を比較した。
結果 
①20歳から10㎏以上体重が増加した者及び早食いの者は、血圧、脂質、血糖検査の有所見率、BMI≧25が高い結果となった。また、就寝前2時間以内に夕食を摂取する者は、BMI≧25が高く、多量飲酒者は血圧が高い結果となった。一方、20歳から10㎏以上体重が増加した者は、男性は41.8%、女性は25.2%であり、その割合は40歳以降ほぼ横ばいである。
②20歳から10㎏以上増加した者の有所見率が高いことから、若年者の食行動と肥満の関連について、当会システム健康診断結果についても検討したところ、食習慣アンケート項目のうち、腹一杯食べる、早食い、肉類をよく食べる、油料理好むと回答した者は、そうでないものと比較して、BMIの平均値、BMI≧25の割合ともに高い結果となった。
【考察】 
これらの検討結果より、20歳から10㎏以上体重が増加しているものは、40歳以前にすでに増加しており、若い世代からの体重管理が重要となる。食習慣については、特に早食い、腹一杯食べる、肉類をよく食べる、油料理を好むなどについて改善をすることが肥満を防ぐ上で、効果があると考えられた。
まとめ 若い世代からの体重管理のための食習慣について検討することができた。早食い防止や腹八分目の食事、脂肪過多とならない食事が効果的であることを再認識するとともに、より効果的で具体的な保健指導について、検討していくことが今後の課題と考える。また、食習慣だけでなく運動習慣、喫煙習慣についても検討していきたい。